こんにちは!
着物を着始めて20年になる表千家茶道講師のビビネコです。
現在も毎週のお稽古、年に2~3回の泊りがけの研修に着物で参加する生活。
このブログの着物カテゴリーでは、着物まわりでお役に立ちそうなこと、着物ライフがより快適になる商品や情報を紹介していますよ。
突然ですが、皆さんは「本場結城紬」に興味はありますか?
「ふっくらして暖かい」「手のかかった最高級の絹織物」よく聞く言葉ですよね?
店舗やネットショップで見てもとても高額!憧れの着物です。
でも、実際にどんなところで、どんな人が、どんな風に作っているのか気になりませんか?
どうしてそんなに高価なのか、疑問に思いませんか?
それがまるごと学習・体験できるのが「本場結城紬産地見学ツアー」です。
ビビネコが参加してから少し時間が経過してしまいましたが、ツアーに参加してみての感想やどんな点がおすすめなのか紹介しますね!
「本場結城紬」産地見学ツアーとは?
「結城紬」ではなく「本場結城紬」
このツアーでは、「本場結城紬」の製作工程を見て体験できます。
「本場結城紬」とは、全行程が手作業の唯一無二の着物。実は「結城紬」とは手のかかり方が違います。
では、どんな風に手がかかっているのか分かりますか?
「真綿かけ」ってどういう事?「手つむぎ糸」って何?
「絣(かすり)」を織るのってそんなに大変なの?他の着物と何が違うの?
そんな疑問が解決するツアーなのです。
一泊二日、本場結城紬を体験して学ぶツアー
ビビネコが参加した2日間のスケジュールは以下になっています。
その時により見学する工房やレストランが異なるようです。絶対に行きたい工房がある時は事前にお問合せして下さいね。
- 糸つむぎの里(真綿掛け・糸つむぎ見学)
- 大久保染店(工房見学)
- 野村不二雄(野村半平)様宅(絣くくり、捺染、機巻き・糊付け・筬通し・掛糸掛け・織り)
- 結城市のフレンチビストロ CAFE LA FAMILLEで夕食
- 横島整理店(湯通し)
- 龍田屋(糸つむぎ・絣括り・機織り体験)
- 結城市内「御料理屋kokyu.」でコースランチ堪能
- 龍田屋にて沢山の本場結城紬の反物・帯を見る
集合場所に到着後は、全行程龍田屋さんのお車で送迎付き!着物でも心配無く参加できます。
宿泊料は込みで、ホテルクラウンヒルズ結城 シングル 朝食付き。
一般的なビジネスホテルで、全身が映る鏡があり着物も問題なく着られます。
価格・日程
●ツアーの価格 38,500円(今後変更の可能性もあり)
●ツアーの日程 1泊2日(宿泊費込み、食事代別)
●「佐藤チアキ和装塾」amebloからの申し込み(年に2回程開催されているようです)
このツアーの魅力と個人旅行の違い
結城紬の製作工程・工房を見られるのですが、観光用に公開されているのは「糸つむぎの里」だけ。他は個人旅行では行けません。つまり、よりコアな体験ができるということ!
結城紬にたずさわる沢山の「職人さん」。お仕事をされているのは大きな工場ではありません。
それぞれの職人さんの普通の民家が工房なんです。そこにお邪魔して、まさに今商品になるものを染めたり織ったりしているのを見ることができます。
参加者の質問次第でよりマニアックだったり、自分では思いつかない内容が聞けるのも醍醐味!
また、その回によってお邪魔する工房が違うので、聞けるお話も異なるんです!毎回がスペシャルツアーですね。
実際に糸つむぎ、括り、織りをする体験も、産地だからこそ。
この地機、簡単そうに見えて激ムズです。ビビネコは足がつりそうになりました(笑)
人とのつながりができる事もこのツアーの魅力です。
チアキ先生はもちろん、龍田屋さん、職人さん、一緒に回る方々と知り合いになれます。
価値感の合う方とのお話は、会ってすぐ意気投合するほど楽しい!
みんなで着ている着物について情報交換したり、産地不明の紬を龍田屋さんに判別してもらったりしていました。
龍田屋さんの全面協力で行われるツアーなので、蔵出しの貴重な反物・帯の数々を見せて頂けます。
「こんなのが見たい」と言うと、奥から出てきます(笑)
囲んで購入させるとかは一切無いので、みんなで安心して見たり当てたり。実際ビビネコが参加した時にも、その場で購入された方は一人もいらっしゃいませんでした。
大きな声では言えませんが、もちろん希望すれば購入する事も可能!直接の購入なので、他で買うより絶対に安いです。(注:とは言っても、本場結城紬なので基本お高いです)
参加に至った理由と感想
ビビネコは元々着物が大好き。
父や母が用意してくれた着物はもちろん、茶道をするようになってからはネットでもリサイクル着物を買うようになりました。
父が買ってくれていた着物の中に結城紬があり、さらに「結城と大島は着物好きの憧れ」という事も聞いていたため、紬の中でもこの二つにはとても興味がある。しかし結城紬を検索すると、お値段も証紙もさまざま!全く見分けがつきません。
「これって何が違うんだろう…」そんな疑問を持っていたところにアメブロで佐藤チアキ先生の記事を発見。
なんと「結城紬の見分け講座」なるものがある…これは、私がまさに求めていた内容!!
その後しばらくは忙しさもありブログだけを拝見する毎日だったのですが、仕事が落ち着いたタイミングで講座を受講。すると、なんともマニアックな内容!すっかりチアキ先生のファンになりました。(見分け方講座に関しては↓で紹介しています)
その先生のブログで「本場結城紬産地ツアー」を募集されていたため、結城紬好きとしては参加しなくては!という事で昨年末に参加を決意したのです。
そしてビビネコは、本当に参加して良かったと思っています。さらに結城紬への愛着が湧き、沢山の人にこのすばらしさを伝えたい!
実際に真綿に触り、自分で糸をつむいでみる。くくってみる。織ってみる。頭では分かっていたのですが、実際に体験するとそれはそれは繊細で時間のかかる作業!そして全然思うようにできません。
改めて自分の持っている着物を見て、職人さんへ頭が下がる思いでした。
もちろん工程や職人さんを知らなくても結城紬は着られますし、それでも全く構いません。
デザインが好き、着心地が好み、何となく有名だから。着る理由がさまざまなのは当たり前です。
しかし、衰退しいつか消えるかもしれないこの素晴らしい技術を実際に見ると、愛着とリスペクトがより深まるんです。できるなら、みんなで支えて後世に残したい、そう思ってしまいます。
今回のツアーで回った工房を簡単に紹介
龍田屋(たつたや)
龍田屋は茨城県結城市にある、1863年(文久3年)創業の結城紬企画・製作・卸売り会社です。
文久3年って何時代?というくらいの超老舗。
こちらのツアーを全面的にサポートしてくれています。
結城紬に付いている証紙に「フ」と赤で印が押されていれば、龍田屋さんの商品ですよ。
(組合員名が藤貫(フジヌキ)さん)
そんな龍田屋店内で、つむぐ・括る(くくる)・織る・ 反物・帯に触れるという体験をします。
160年を超える老舗の、趣のある店舗は入るだけで貴重な体験!磨き上げられた店内は、古くても清潔で凛とした空気が流れています。
個人で来たら「何か買わなくてはいけないような気がする」プレッシャーで、さっさと出てしまいたくなりますが、ツアーでは終始アットホームな雰囲気(笑)。糸取りの名人の方や、店主の妹さんが優しく手取り足取り教えてくれます。
また市場に出る前の最新の結城紬や創作反物を見られて、お得に購入する事もできます。過去に作られた200亀甲の幻の結城紬の生地もありますよ!
さらに、何度も洗い張りを繰り返した結城紬は必見!とろりと柔らかく、しなやか。
これは実際に触らないと分からない!3代着られるとはこういう事か、と実感します。
大久保染店
住宅街の中で、静かに結城紬の糸染めのお仕事をされています。
その天才的な感覚と緻密な管理、地道な試行錯誤の繰り返しで生まれる柔らかな色合いが美しい!
大久保さんは、「結城紬の糸は、他の染屋では染められない。やり方を間違えると、糸がワタに戻ってしまう。」とおっしゃってました。
皆さん、この意味わかりますか?
染めたらせっかくつむいだ糸が全部くっついて、ごちゃごちゃにからまってワタ状に戻り、着物にできなくなってしまうというのです。
衝撃的ですよね?そこまでにかけた時間と手間がすべて無駄になってしまう。
それくらい、大久保さんの仕事は凄いのです。
その結城紬の糸を染められる染屋さんの中でも、唯一藍染もできる大久保さん。
そんなすごい技術を持った大久保さんのお話を聞けて、工房の見学もできます。
膨大な色見本と数々の楽しい逸話は、聞いて損はありません!
野村不二雄(野村半平)様宅
織屋さんの中でも、唯一無二の技術をお持ちの野村さん。
工房は一般の住宅の一角です。
野村さんのところでは絣括り(かすりくくり)、捺染(なっせん)、機巻、糊付け、筬通し、掛糸かけ、織りをされています。
野村半平さんといえば、戦中に結城紬を守り国の重要無形文化財指定に奔走した、結城紬に人生を捧げた方。
そんな半平さんとご子息の福一さん、妻の野村キミさんによって生み出された知る人ぞ知る「本場夏結城」。
本場結城紬の技法を守り、結城本来の良さを損なわず、単衣から夏にかけて着られるように麻糸を織り込んだこの「本場夏結城」は、野村さんの工房でしか作ることができない逸品です。
そんな大変な技術者の野村さんですが、とても気さくで楽しいお方。
ビビネコがツアーに参加した時、チアキ先生は160亀甲の本場結城紬を。ビビネコは100亀甲モロ入り本場結城紬を着ていました。不二雄さんは、「これは魂のこもった絣だね。見たら分かるんだ」とその魂の絣の見方もお話して下さいました。
どういうことかというと、「同じ結マーク100亀甲でも、質の良い魂の入ったものと、そうではないものがある」
こういうお話は、実際に行かなければ絶対に聞くことはできません。
結城紬の絣の模様を作るのは大変な作業。でもそれを知らなければただの模様。
着物によっては、数万か所を糸で括らなければならない。見る人が見なければ、それが完璧な仕事か分からない。でも一か所たりとも妥協の無い仕事。
またその時、無地の機織りをされていた職人さんが食い入るように着物を見て「160亀甲とか100亀甲のこういう細かい絣をもっと織っていきたいのよね」とおっしゃっていました。
ビビネコはその言葉を聞いて、「結城はまた野村さんに守られるのかもしれない」と結城業界に希望の光を見た気がしました。
衰退しているのではない、前進してゆこうというチカラを感じたんです。
横島整理店
ビビネコは今回、はじめて整理店という仕事を知りました。
整理店は、反物の湯どおし(地入れ)、洗い張りを専門に行う所だそうです。
その中でも横島さんは、「結城紬の湯通しができる一軒だけの整理屋さん」。
というのも、紬は購入されたあと必ず湯通しをして余分な糊(ノリ)を落とし、仕立てられます。
そうしないと、「ふっくら柔らかい結城紬」のはずが、「ゴワゴワの硬い着心地」になってしまうのです。
しかも横島さんしか結城紬の湯通しをできない理由は「紬によって使っている糊が違う」から。
結城紬に使われる小麦粉糊を、生地にとっても着る人にとっても丁度良い状態に落とせる技術を持つ整理屋さんは横島さんのみ。他の産地の整理屋さんに出すとせっかくの風合いが変わってしまうのです。
「結城紬の産地への里帰り」という言葉があります。
それは、結城紬は結城で湯通し、洗い張りするのが最善ということだったのです。
みなさんお持ちの結城紬、どこで湯通しされましたか?
このブログを見ていて、横島さんにぜひ結城紬の洗い張りをお願いしたい!と思った方、方法がありますよ。直接ではなく「龍田屋」さん経由で依頼できますのでお問合せしてみて下さいね。
ビビネコも、洗い張りをする時は絶対に横島さんにお願いする!と決めています。
このツアーがおすすめな人
結城紬って、有名だけど詳しい事は分からない…
日本が誇る素晴らしい伝統文化をもっと知りたい!
そんな方も多いと思います。大人の修学旅行、行ってみませんか?
ツアーの前後におすすめな見分け方講座
さきほど紹介した「結城紬の見分け方講座」。
このツアーと合わせて受講するのが本当におすすめです。結城紬に関する疑問がスッキリ解決しますよ。
詳しい内容は紹介できませんが、
- 結城紬について
- 結城紬と本場結城紬を見分ける方法
- 結城紬と結城縮の違い
- 証紙の見方(旧証紙・新証紙)
- 亀甲の見分け方
- 沢山の実物の結城紬をルーペで見て「見分け実践」
このような内容で、超濃密!
ビビネコはこの講座を受けて「着物問屋よりも結城紬に詳しい」と言われるようになりました。(笑)
気になった方は、こちらのブログをチェックして下さいね。
まとめ
- 本場結城紬産地見学ツアーは大人の修学旅行
- 結城紬を着るだけではなく、もっと深く知りたい方には超おすすめ
- 反物の向こうの丁寧な仕事、職人さん達の思い、本物を守り続ける姿は現地でしか見られない
- 知識を身に着けるだけでなく、肌で感じ、魂で味わうツアー
- 着物・結城紬を守るには私達が着る事
今回は「本場結城紬産地見学ツアー」を紹介しました。
何かを好きになり、そのものについてもっと知りたい時、皆さんどうしますか?
まずはネットで検索しますよね?そしてどんどん詳しくなり、さらにその魅力にはまってゆく…
最終的には、その「モノ」が生まれた、育った場所に行きつくのかなあと思います。
そして歴史や風土を肌で感じて大切にする。
このツアーではそんな体験ができると思います。
ビビネコは着物、結城紬が大好き。それを作っている方々を尊敬しています。
ぜひ沢山の方に結城紬の良さを知ってもらい、みんなでどんどん着て産地の方々を支えたい。
高価なので、そうそう新品は購入できないかもしれません。
しかし、譲られた物でも中古でもいい、みんなで着て着物業界を盛り上げませんか?
この素晴らしい伝統工芸が、未来につながりますように…
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