転職・就職を考える時、仕事内容は気になりますよね。
でも、「検索しても同じような内容で、実際にやっている場面が想像できないよ~」という方は多いのではないでしょうか?
今回の記事はそういった方に読んで頂きたい内容です。
知っている所は読み飛ばして、良く知らないところだけ読んでいただいても構いませんよ!
この記事では、3件の総合病院に転職し計14年務めた筆者が、そのお仕事内容をできるだけ具体的に解説しています。
他の業種と迷っているかたは、目を通しておいて損はありません!
ある程度大きな総合病院の薬剤師は、いくつかの部署に配属されて働いています。
その間にさまざまな事情で配属部署が変わり、個々の経験として積みあがります。
調剤室では外来・入院患者の調剤、監査がメイン基本、調剤薬局と似た業務
調剤室は、調剤薬局と同じような仕事になります。
現在では、外来院外処方(外来の処方せんは患者さんにお渡しし、病院外の薬局で薬をもらう)を取り入れている病院が多く、病院内では入院患者さんのお薬を用意することになります。
外来の薬も院内薬局からお渡しする病院は、同じように調剤して窓口でお渡しします。
その場合、病院薬局は非常に多忙となります。
関連業務も含めて、調剤室の仕事は以下のように多岐にわたります。
処方監査(処方内容のチェック)
医師が発行した処方せんを、調剤する前に確認します。
具体的には、薬剤の数量、用法、日数などに入れ間違いが無いか。
疑義照会と処方修正、他部門からの電話もここで受けます。通常、新人がこの業務につくことはありません。
電子カルテが調剤室のシステムと連動している場合には、改めて処方の入力をする事なく薬袋作成機、散剤・水剤・一包化の機械に情報が飛びます。
電子カルテと連動していない場合は、処方せんに記載されている内容を入力し、各システムに飛ばします。
入院・外来処方調剤(ピッキング)・最終監査
ピッキングとは、処方せん内に指示されている薬剤を、棚から必要数取り出して集める事を言います。薬剤師以外に、調剤助手や調剤補助員にて行われる場合もあります。
処方監査に通った処方せんを元に、内服薬・外用薬のピッキングを行い、散剤、水剤、麻薬などと合わせて最終監査へ渡します。
最終監査では再度、処方せん内容に間違いが無いかを確認します。
さらに、ピッキングされた薬剤の種類、量、散剤の重量監査、水剤の監査、麻薬の監査も行い、薬袋の表記も確認してから入れます。
麻薬調剤(散薬・錠剤・水剤)・看護師への受け渡し
麻薬はすべて厳重に帳簿・金庫管理されており、必要事項を記録して調剤します。
また、最終監査が終わったものは、看護師とともにダブルチェックをして手渡しします。
水剤調剤(自動水剤分注機非対応の処方)
水剤もそれぞれの施設で決められた方法により、調剤します。
あつかう水剤が多い施設は、自動水剤分注機(例:miniAQUA®)を使用しています。
散剤調剤(散剤調剤ロボット非対応の処方)、錠剤粉砕調剤
散薬を秤量、分包します。
散剤の自動調剤ロボット(例:DimeRo®)を使用している施設もあります。
錠剤粉砕の指示があった場合は、指示通りに粉砕して賦形(カサを増して分包した時の誤差を少なくする事)、分包します。
一包化予備監査(最終監査前に、錠数、内容、包数を確認)
一包化の機械から出来上がってきた物を、最終監査に出す前に内容、数を確認します。
機械のミスで隣の包に飛んでしまったり、抜けがある事があるためです。
また、機械のカセットへの薬剤入れ間違えによる過誤を防ぐためでもあります。
こちらも、自動監査システムを導入している所があります。
返品薬の処理(薬袋廃棄、PTP戻し入れ、ODPバラし、鑑別、戻し入れ)
処方された後に、指示変更や処方間違いなどで返品される薬剤があります。
これを間違いの無いように注意しながら戻し入れします。
一包化された状態のものは、包装から出して分け、刻印を鑑別して戻します。こちらも全自動で鑑別・振り分けする機械が開発されています。
散薬補充
使用して少なくなった散薬を瓶に補充します。
特徴的な薬剤以外は、包装から出してしまうと判別不能なので、充分な注意が必要です。
一包化カセット錠剤補充、バラ錠準備
一包化を作成する機械のカセットに翌日に備えて薬剤を補充します。
機械が大きく、数が多くなるほど時間のかかる作業になります。また、バラ錠で市販されていない薬剤は、必要に応じてPTPから外して準備しておきます。
散薬、市販バラ錠発注
補充が終わり次第、翌日に不足とならないよう在庫の確認をします。後ほど出てくる薬品管理室に発注数を依頼します。
向精神薬、帳簿在庫付け合わせ
一日の業務終了前に、向精神薬の在庫確認、帳簿付けをします。盗難などの事故を予防、早期発見するためです。
入院患者持参薬鑑別、報告書作成
入院患者の持参薬鑑別の依頼が病棟から来ることがあるため、鑑別して報告書を作成します。
手の空いている薬剤師が担当しますが、病棟薬剤師が対応する場合もあります。
窓口で処方内容説明、お薬手帳との付け合わせ、手帳にシール貼付
院外処方せんを発行していない病院では、お薬を渡す際に窓口で薬剤の説明をします。
お薬手帳はその場で確認し、手帳シールを貼付します。相互作用や重複があった場合は、この段階で疑義照会する事になります。
製剤室では院内製剤作成、抗がん剤調製、高カロリー輸液混合を行う
製剤室という部署名が無い病院もあるかもしれませんが、今回は製剤室があると仮定して説明します。
院内製剤の作成
市販されていない、治療や検査に必要な薬剤の調製をします。点眼剤、注射剤はクリーンベンチという清潔操作ができる作業台で調製します
予製作成
調剤室で使用される、処方される頻度の高い散剤の混合や、軟膏の混合剤をあらかじめ作ります。
そうする事で、処方せんを受け付けてからお渡しまでの時間短縮をしています。
抗がん剤レジメン確認・調整
抗がん剤の治療をする場合、体重・体表面積により使用する薬の量が異なります。
また、がんの種類によって薬の種類、組み合わせ(レジメンと言います)が異なります。
製剤室では医師の指示が出た後に、患者さん一人一人に適したレジメン・投与量である事を、確認しています。その上で、調製に入ります。
高カロリー輸液混合調製
入院中に患者さんが長期間食事をとることができない場合、点滴で全てのエネルギーをとらなければいけません。しかし、通常の点滴では必要なカロリー摂取ができません。
そこで、太い血管(ふとももの付け根や鎖骨の下)に高カロリーの点滴をする必要が出てきます。
長期間の点滴で感染症を発症するのを防ぐため、この点滴をクリーンベンチで調製します。
治療薬物モニタリング(TDM)
薬の中には、治療に必要な量と、副作用が出てしまうまでの量が非常に近いものがあります。
しかも、人によって血液の中に入る薬の量にバラつきが出やすい場合、個々人に合わせた薬の量を計算しなくてはなりません。
この時に行うのが、TDMです。血液中の薬剤量を測定し、個人の条件を使って薬剤量を予測、投与量設計をします。最近では、製剤室ではなく、病棟担当者が行う事もあります。
薬品管理室では主に注射薬払い出し、在庫管理を行う
病院で扱うほとんど全ての薬剤の管理、発注、払い出しを行います。
注射薬払い出し
病棟で入院患者さんに使用される注射、点滴を注射処方せんに基づき個人ごとにワゴン等にセットします。この時、同時に用量の間違いが無いかなど、内容の確認もします。
また病棟に定数配置された点滴、注射剤の補充分の払い出しも行います。
全て、間違いの無いよう必ず、調剤と監査のダブルチェックを行います。
発注、在庫管理
全薬剤(内服薬・外用薬・注射薬・検査薬等)の使用状況を入力、確認し、発注します。
薬品は高額なため、不動在庫や過剰在庫は病院の経営にも影響しかねず、重要な仕事となります。
薬剤の入庫処理、陳列補充
入荷してきた薬剤を仕分け、陳列補充します。先入れ先出しが基本で期限管理も同時に行います。
注射薬自動払い出しシステム
注射薬自動払い出しシステム(アンプルピッカー等)を使用している場合は、その機械にアンプルの補充を行います。翌日の仕事がスムーズに運ぶよう、準備する事になります。
病棟担当者は薬剤管理指導業務を行う チーム医療を実践できる
入院患者へのベッドサイドでの薬剤の説明、記録の作成がメインです。
必要に応じ、医師の回診に同行して医師に情報提供したり、看護師とのカンファレンス(医療界では患者さんについての検討会)を行います。また、調剤室が忙しい時間帯はヘルプに入ります。
入院患者への服薬指導
ベッドサイド、デイルーム(入院患者さん、お見舞い患者さん用休憩スペース)、カンファレンス室など、状況によって場所は変わります。
新しく処方された薬の説明はもちろん、体調の変化の確認や質問への返答、検査値の説明など。
ビビネコが働いていた時は、一日に15人~20人ほど指導していました。
薬歴作成
その日に指導した患者の薬歴を作成します。
他の業務が多忙で記録が間に合わない日は、翌日以降に記録する場合もあります。
通常、記録方式はSOAPです。電子カルテに組み込まれている場合は、全職種に公開されることとなります。
患者の情報確認
ある程度決まった時間に(例えば16:30など)その日に処方された内服・外用薬や注射指示、がん治療であれば治療のスケジュール、退院日などを確認します。
その情報をもとに、翌日の患者指導の内容、予定を立ててゆきます。
また、新規入院患者がいれば、翌日以降の初回服薬指導用に、看護師のアナムネ(病歴・既往歴・その他の患者情報を聞き取る事)を確認したり、医師のカルテを確認します。
入院患者が多い日は、業務量が増えます。
医師の回診同行
週に一回程度、その科のトップの医師が全員の患者を回診に行っていました。
その時に同行、患者の薬剤使用状況などの質問に答えます。
その場で患者と医師のやり取りを聞けるので、その後の服薬指導に役立ちます。
医師にも重宝されますし、チームとしてもコミュニケーションがとれます。
担当している科が複数にまたがっていると、週に何度か回診に同行する事になります。
看護師が行っているカンファレンスに参加
毎回ではありませんが、薬が絡んでいる内容の時、薬剤師も関わったほうが良い時などは参加します。通常、20~30分程度で、参加した場合は記録に残します。
薬剤のデバイス(装置のこと)使用法説明
糖尿病の自己注射器・喘息の吸入器に代表される、薬剤使用装置の使用法を説明・指導します。
入院患者の場合、手が不自由、目が見えにくいなど何かしらの問題点を抱えている場合もあり、重要な仕事となります。
院内で行っている〇〇教室などの開催
糖尿病教室に代表される患者向けの講義を、他の業種の職員とともに行う事があります。
治験担当は事務作業が多い
治験とは、簡単に言うと「くすりの候補」を人に用いて、国から薬として販売・使用しても良いと認めてもらうために行う臨床試験の事です。
治験を行えるのは、医療設備が充分に整った、国が定める要件を満たす病院だけです。
薬剤師は、薬局に保管されている治験薬の管理、個人データや帳簿の管理、治験を進めてゆくための事務処理などを行います。治験コーディネーター(CRC)、医師との連携が必要です。
治験業務は、その施設の規模により専任の場合と、他業務との兼任の場合があるようです。
医薬品情報業務(DI)は業務が発生した時に
薬は膨大な数があり、さらに毎年新しい薬が発売されます。
すでに発売されている薬も、日本中の医療機関での使用経験から新しい副効果や副作用が報告、研究データが公開されます。
DI担当者は、そういった最新情報を把握して院内に「薬局報」として発信したり、医師や時には薬剤師からの依頼に応じてピンポイントで情報提供します。病院によっては、院内の薬剤マスタ(基礎になっているデータ)管理を担っている場合もあります。
まとめ
今回は、病院薬剤師の具体的な仕事内容を紹介しました。
突発的な仕事が入ることはありますが、そこで働いた場合のおおよそのイメージはお伝えできたのではないでしょうか?
病院は仕事がきついというウワサだけを聞いて敬遠していた方たちも、病院でしか経験できない事がこんなにある!ということがわかれば、また違った選択肢が生まれるかもしれません。
薬剤師としてのキャリアを最大にするため、しっかり考えて転職、就職しましょう!
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