調剤薬局に勤めたい、転職したいとき、皆さんちょっと考えますよね。
「大手の調剤薬局の方が良さそうだけど、個人薬局の方が年収高いし…どうしよう。」
「でも結局みんな大手に行くから、大手の方がいいんだよね…?」
そんな風に思っている方に読んで頂きたい記事です。
今回の記事では、「超」ではありませんが大手調剤薬局に勤務し、管理薬剤師、薬局長経験のあるビビネコが、内部事情も盛り込みながら具体的に解説してゆきます。
この記事を読むことで、どんなメリット・デメリットがあるのか、どんな人が大手の調剤薬局に向いているのかが分かり、今後の働き方を決める手助けになると思いますよ!
個人経営の調剤薬局に勤めるメリット・デメリットを知りたい方はあわせてこちら↓↓↓の記事もご覧下さい。
調剤薬局でも、大手と個人薬局では働き方が異なる
調剤薬局での基本的な業務である、「調剤」「監査」「疑義照会」「投薬」といった内容は当たり前ですが変わりません。
しかし、細かい就業規則や本部との書類のやり取り、機械の問題など、求人には載ってこない部分に違いが出てきます。
大手調剤薬局に勤めた時のメリット
沢山の薬剤師が勤務しているのですから、メリットは沢山あります。ひとつづつ見てゆきましょう。
大店舗はスキルアップに有利
大きな店舗は総合病院の門前の場合が多く、応需する診療科が多岐に渡ります。処方せん枚数も多いため、毎日多くの処方を調剤、監査します。がんや希少疾患を診察していれば、その治療内容、レジメンを学ぶことができます。
また、教科書的ではなく、大規模臨床試験や学会報告された治療法などが行われる事もあり、日々業務のほかに勉強が必要になります。
当然薬剤の知識は増えますし、患者対応や病院への疑義照会でコミュニーケーションスキルも高まります。場合によっては、病院での勉強会に参加させてもらえたり、新薬を取り扱う事が多いため、メーカー薬品説明会も頻繁に行う事になるでしょう。
薬局内では、新薬採用時にマスター登録や一包化カセットの用意・登録が必要になりますので、そういった業務も数をこなす事で身に付いてきます。
総合病院前の店舗に勤めていたという経歴は、転職においては非常に有利な条件となります。
教育制度・福利厚生が充実している
大手は新卒の薬剤師を多く採用する事を見込んで、教育制度を用意しています。採用後はすぐに現場に出ることなく、まずは本部で研修を受け、ある程度の規則や仕事内容を学んでからの業務開始となります(中途採用については研修は無い事があります)。
店舗に配属になってからも、従事している薬剤師の人数が多いため、サポート体制がしっかりしているでしょう。
個人薬局ではそもそも店舗内の人数が少なかったり、特に教育制度なども設けていないので、どんどん仕事をしてもらって、分からない事があればその都度説明となります。中途採用であれば、どんな機器でどういう流れで仕事をしているかが分かれば即戦力として働きます。
また、大きな会社になれば、提携している福利厚生が多くなります。実際どのくらいの人が利用しているのかはわかりませんが、こまめに利用できるひとにはお得かもしれません。
最新の機器を揃えている
大きな会社であれば、自己資金が豊富で設備投資にも積極的なため、最新の機器が入りやすいです。
最近では、散薬や水薬はロボットがある程度調剤してくれる時代なので、そういった機器を使った事があるというのも大きな経験になります。
当然、調剤過誤対策には力を入れており、ピッキングエラー防止システム、相互作用や併用禁忌チェックシステムなど、知識に自信が無くても機械に助けられる事は多いでしょう。
また各店舗で同じシステムを使っている場合が多いため、店舗が異動になっても、すぐに対応する事ができます。
休暇が比較的取りやすい
実際の取得率は店舗毎に差があると思いますが、会社の状況としては休みが取りやすい人員配置のはずです。
まず店舗の人数が多ければ、一人休んでも他の人間でカバーできるため問題ありません。
もし店舗の人数が少なくても、他の店舗から一時的に応援をもらう事ができるため、休暇を取りやすいのです。
急な休みにも、計画的な休みにも、シフト調整、応援で対応します。長期休暇に関しても、会社がそれを推奨していれば、職員全員で計画的に休みを取るシフトを組むでしょう。
個人薬局、特に一店舗の場合はそれが難しいのです。
倒産のリスクが低い
薬局経営は、調剤報酬によって収益が変わるため、2年に一回の薬価・調剤報酬改定により収支が大きく変動します。超大手だと、多少の店舗閉鎖や縮小はありますが、完全な倒産という事態にはなりにくいです。
最近は大手に厳しい改定内容となっており今後も注意は必要ですが、本部が健全な経営をしていれば急な倒産は無いでしょう。もし自分が勤務している店舗が閉鎖・売却となった場合にも、他の店舗に配属変更させてもらえます。
実力次第で、昇進、昇給の可能性がある
しっかりと仕事をして、加算やかかりつけなどを積極的にとれば、昇進・昇給もあります。
実際ビビネコは、管理薬剤師に上がる時、薬局長に上がる時で昇給しています。この間6か月。短期間での昇給が可能なのです。
しかも、逆に減給のリスクは低いです。
会社としてきちんとした規定があるので、そう簡単には減給、解雇はできません。
今現在の給与で満足していて、安定したい場合には、転職の必要性は無いと考えられます。
就業規則、待遇の透明性が高い
きちんとした給与規定があり全職員がそれに従って従事しているため、タイムカードを使用した出社・退勤管理をされ、規程の手続きをすれば時間外手当が支払われます。
また、その店舗の管理者がきちんとルールを守る人ならば、不当なサービス残業をさせる事も無いでしょう。
ただし、「ただ時間外手当が欲しいがために、たいした仕事をしていないのに残っている」「通常業務が著しく遅いために時間外業務が発生している」などは、当然指摘されますし、手当も出ません。
このように大手は就業規則・給与規定がしっかりしているため、従業員間での公平性が高く、時間外での不満は出にくい環境です。
給与明細がきちんと表記されているので、もし不備があった場合もわかりやすいです。一年間に取れる有休の日数なども記載されていて、対応しやすいと思います。
個人薬局の場合は、それぞれの薬局のポテンシャルにより左右されるため、どのように管理されているか確認した方が良いかもしれません。
パートなら、土日祝日を休日にする契約も可能
大手調剤薬局にパートで勤務するなら、契約時に勤務日を設定できるため、土日休みにすることができます。年収としては下がってしまいますが、安定した給与で休みをきちんと取りたい、決まった時間に帰りたいという事であればパートが良いでしょう。
ある程度時間に余裕が出てくれば、正社員になる事も可能です。そうなれば、今までの仕事の実績、勤務年数が評価されて給与の交渉もスムーズにいくでしょう。
当直、日直、休日当番が無い、もしくは少ない
調剤薬局は、基本当直・休日(日曜)当番がありません。応需している病院が月に一回など救急対応している場合は開局します。しかし、当直はありません。これに関しては、個人薬局と同じ条件になります。
大手調剤薬局のデメリット
デメリットもあげましたが、長期的に自分のスキルアップと考えた場合には必要な部分もありますので一概に悪いとは言えません。順に見てゆきましょう。
年収が低く抑えられやすい
個人薬局に対して年収、給与が低くなりがちです。
大手が低くしているというよりは、個人薬局は高い年収設定にしないと人が集まらないという需要と供給の問題ですね。
しかし昇給の制度がありますし、ある程度スキルを磨いたら転職と割り切るという考え方もあります。
異動・引っ越しを伴う転勤がある
店舗が多く、退職者も多いため転勤、異動があります。
引っ越しを伴わない近隣の店舗への異動なら、内示が出てから一週間ほどで着任という事もあるようです。また、一応異動について希望を確認してくれる会社もありますが、そのあたりは確認した方が良いでしょう。
月次書類の作成など、事務作業が多くなりがち
各店舗で、月ごとに提出書類を作成する必要があります。ある程度仕事をしてゆくと、こういった事務作業が多くなってきます。
日々入荷する薬剤の伝票入力、卸からの請求金額とのすり合わせ、調剤に関わる点数のとりまとめ、売上目標設定など多岐に及びます。こういった書類をとりまとめ、本部へ提出します。
棚卸が頻繁にある
頻度はその会社によって違いますが、棚卸が頻繁に行われます。
ビビネコがいた薬局は、最初は半年に1回の棚卸でしたが、途中で3か月に1回へ変更になりました。会社によっては、毎月行う所もあるようです。
調剤薬局の場合、ヒートの薬剤以外に、一包化に使用するバラ錠もありますよね。これを全て数えて理論上の在庫と合わせ、実在庫の数を入力、本部へ送信。大きく在庫がずれている物があれば原因追及、理由や報告書の作成。場合によっては再棚卸を指示される事もあるようです。
しかも、通常の薬局業務が落ち着いてからの作業になるため、棚卸当日は夜遅くまでの勤務となりがちです。さらに、そこからの薬品発注。棚卸前は在庫金額を抑える事が多いため発注数も多く、翌日の薬品入荷が大量になります。
逆に棚卸前は在庫が少なく、薬品の不足を起こして至急発注が頻発する事もあります。
ビビネコが働いていた個人薬局は、一年に一回棚卸をしていましたが、一日で済ませるのではなく、空いている時間に少しずつ数えていました。またその時点での在庫を確認する方法で、薬品数もそこまで多くなかったためさほど負担にはなりません。
バラ錠を買わずにヒートをバラして使用しているのも管理のしやすさに繋がっていました。
ノルマを課せられる場合がある
ビビネコがいた薬局では求められませんでしたが、超大手には様々な加算にノルマがあるようです。
そうなると、かかりつけ薬剤師を取るために当然認定薬剤師はとらなくてはいけませんし、患者とのコミュニケーション能力も必要になります。
点数についてもシビアに算定できる知識が必要です。しかし、ここでしっかり点数を算定できるようになると、他の調剤薬局に転職した際にもスキルとして非常に役に立ちます。
運営に関する書類は参考になるが、経営に関する勉強はしにくい
大手は経営の本体が本部にあり、具体的な経営のノウハウ(金銭面の具体的やりくり)は学びにくいでしょう。
ただし、各種マニュアル、事務関係(レセプト)、法令関係の書類は店舗に保管されているので運営という意味では得られるものは多いです。
ここは割り切って薬局の運営を学ぶことに集中しましょう。
早番・遅番など勤務時間が一定にならない
医療機関の開院時間にもよりますが、薬局の開局時間が長くなると、早番・遅番など時間をずらしてシフトを組む必要性が出てきます。
必然的に全員が公平に早・遅番を取るように組まれ、勤務時間がバラバラになります。
子供のお迎えや習い事など一定の時間に帰りたい場合は工夫が必要になります。
規則が細かく、自由度が低い
会社が大きいほど規則は細かくなりがちです。医療機関なので、一般的な身だしなみは決まっている所が多いです。
会社によっては必ずスーツで出勤、男子はネクタイ着用の上に白衣などの所もあります。いくらおかしいと思っても、ここは従うしかありませんね。
他店舗への応援業務がある
有休の取得等で欠員が生じている店舗には応援要員が送られます。お互い様なので、ここは融通しあいます。
他店舗に行く事で、普段は扱わない薬剤や疾患について学ぶ機会が得られるので、プラスとして考えられる精神力と順応力が必要です。
忙しい
総合病院や大きい病院の前の薬局は忙しいです。単純に処方せん枚数が多い場合もありますし、一枚の処方せんの内容によっても業務負担は変わります。
少ない薬剤師で沢山の処方に対応できる臨機応変さ、判断力、患者対応力が鍛えられます。
正社員は土日の週休2日にはなりにくい
パート従業員が土日休みの事が多いため、正社員は土曜日勤務に当たりがちです。
土曜日半日勤務してどこかの曜日で半日休み、合計で一日とカウントされ、完全な休日が週に一日という事もよくあります。
どんな人が大手調剤薬局に向いているのか
新卒で調剤薬局に勤めたい人、スキルアップしたい人
新卒の場合は、個人薬局よりも大手調剤薬局の方が良いです。教育制度もありますし、多くの処方せんに触れる事で知識、スキルを磨くことができます。
いつか転職・開業という場合にもこの基礎をきちんと学んでおかなければ、今後働くのが厳しくなってきます。
開業に向けて調剤薬局の運営ノウハウを知りたい、書類のひな型が欲しい人
運営の形態を学ぶにはもってこいです。書類関係は必要な物が全て系統立ててファイリングされているので、今後開業予定の方はそれを参考にさせてもらうとスムーズに準備が進むでしょう。
異動・転勤に対応でき、大手で昇格・昇進希望の人
最初から異動がある事が分かっているので、それに対応できるようにした方が良いです。
また、そういった異動や転勤に伴い昇格・昇給してゆくので、異動ありきで勤めた方が良いでしょう。
安定してパートで働きたい人
急に解雇になる可能性が少ないので、安定してパートとして働きたい人には向いているでしょう。
個人薬局よりも身分保証される可能性が高いですし、状況によっては店舗の異動をお願いする事もできます。
産休、育休制度を利用しながら働き続けたい人
大手は産休・育休もきちんと取得できる可能性が高いです。個人では必ずしもそういった制度を使えるとは限りません。
大手調剤薬局の中から選ぶ時のポイント
大手でも、求人条件が異なるのでよく確認
各社、求人条件や給与制度が異なるので、転職を考えている方はゆずれないポイントを事前にリストアップしておく事をおすすめします。
新卒は、とりあえずはひたすら学ぶ・スキルアップをする事だけ考えれば良いです。3年~5年以上勤めてしっかり基礎ができたら、その後どうするか考えましょう。
その時の業界事情もまた変わっているかもしれません。
転職時には、エージェントを使った方が良い条件で契約できる場合がある
ある程度大手の調剤薬局や病院に勤めて、その後キャリアアップの形で転職するなら、交渉に注意しましょう。
また、その時の相場を確認した上で、まず転職するのかどうかを先に考えた方が良いです。場合によっては今後、転職により給与が下がってしまう可能性もゼロではありません。
そして勤務を継続したまま、ハローワークやネットの求人サイトを確認します。そこで良い条件のものが見つかれば申し込みでも良いですね。
しかしそのまま一件だけに申し込むと、それ以上の契約の好転が期待できないのでもったいないです。ビビネコの考えではエージェントの付くサイトにも登録した方が良いと思います。
そうする事で、勤務条件・給与の交渉、日程の調整など面倒な事をすべて無料で代行してくれるからです。
ビビネコは、エージェント経由で3社と面接、結果希望年収+130万で契約しました。ちなみにビビネコが登録している転職エージェントはこちら↓↓↓です。
まとめ
いかがでしたか?
大手の調剤薬局なのでイメージはついている人も多いとは思いますが、実際このようにリストとしてまとめると、自分に本当に合っているのか、最終的にどんな働き方をしたいのか、考えてしまうのではないでしょうか?
これから薬剤師は供給過多になるという予測もあります。忙しくて先の事まで考えられないという人も多いと思いますが、将来のあなたにとって仕事について考える事はとても重要な事です。後回しにしてはいけません。
今後の業界の動向も注視しつつ、スキルアップしながら自分に合った働き方を見つけましょう!
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