【着物】パールトーン(ガード)加工は必要か?判断基準と考え方!

着物
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こんにちは!ご訪問ありがとうございます!
着物を着始めて20年になる表千家茶道講師のビビネコです。

現在も毎週茶道のお稽古に通い、自身でも茶道サークルで講師をしています。
年に2~3回の泊りがけの研修には着物で参加していますよ。
このブログの着物カテゴリーでは、ビビネコがこの20年で得た着物まわりのお役に立ち情報、着物ライフがより快適になる商品を紹介しています。

今回は「着物にパールトーン(ガード)加工は必要なのか?」というテーマです。

  • 着物を着始めたけど、加工ってした方が良いのかな…
  • デメリットもあるって聞くけど、実際どうなんだろう?
  • 私の着物はガード加工、必要?不要?
  • 茶道で着たい着物、全部ガードした方が良い?

そんな疑問に答えてゆきますよ!

結論、パールトーン(ガード)加工は上手に使えば非常に有効です。
そして加工を掛けた方が良いのは、

水や汚れが付くシチュエーションで着る、大切な柔らかものの着物

ネットでも「ガード加工は絶対必要!」という意見も、「ガード加工のデメリットを業界が隠している!」という声もあります。

ビビネコはここ一年で「必要なものにだけ掛けるのが一番良いのではないか」という結論に至りました。
ガード加工が着物を救う神でもなければ、悪でもない
その使い方次第で良くも悪くもなるのです。

でもその使い方を理解しないまま、一部の「何でもガード加工推進呉服屋さん」の言うままに掛けてしまう。それはどうかと思うのです。
ものによっては、掛けない方が良い着物だってある

また最近ではリサイクル着物の売買も盛んですよね。買った着物にはガード加工されていない。
じゃあどうしようか、という話になります。

最終的には先ほどの結論になりますが、もっと細かい着物別の判断基準と「茶道の着物」での考え方をここから解説しますね。

この記事でわかること
  • ガード加工のメリット・デメリット
  • ガード加工を掛けた方が良い着物
  • ガード加工を避けるべき着物
  • 茶道に着る着物の中でガードをかけた方が良い着物
  • ガード加工されたリサイクル着物のクリーニング方法

ビビネコのプロフィール
茶道歴約20年 表千家茶道講師許状所持
入門・習事・飾物・茶通箱点・唐物点・台天目点・盆点 取得済
ほぼ毎週、着物でのお稽古を継続中。   年に数回、宗匠稽古、講習会に出席  
着物はタンス2棹にびっしり、枚数は秘密(笑)
インスタグラムでは、ほぼ毎日着物コーデをアップ!
「楽天ROOM」には掘り出し物の高品質リサイクル着物、帯、小物などをこっそり紹介中(笑)

着用済みの着物やリサイクル着物にガード加工を掛ける手順はこちら↓↓↓
    

パールトーン、ハジック加工などは「ガード加工」の一種

世の中には、「パールトーン」とか「ハジック加工」とか色々ありますよね?
実は、どれも「ガード加工」の一種です。
加工する会社によって薬品や加工の仕方が違うだけ。どれも撥水加工としては大差ありません。

基本的には繊維一本一本に成分を浸透させ、水がしみたり汚れが付くのを防ぎます。
生地に膜を張る「防水加工」とは異なり、糸と糸との間にはスキマが残って通気性は変わりません

メリット・デメリットを簡単に説明しますが、知っているよ~という方は飛ばして下さいね。

ガード加工のメリット

ガード加工のメリット
  • 撥水効果でシミ・汚れが付きにくくなる
  • 水分による着物の縮みが起こりにくくなる
  • 保管中にカビが出にくくなる
  • 金糸・銀糸の変色が抑えられる

ガード加工の一番のメリットはこれ。水や汚れを弾いてくれる。
雨が降ってきても、着物に飲み物をこぼしても染み込まず汚れません

2つ目は、着物が縮みにくくなる。
水に濡れた時はもちろん、タンスに入れていても空気中の水分が多いと着物は縮みます
しかしガード加工をすると、糸に水分が入らず縮みを防いでくれます。

糸が水を吸わないので、保管中にカビも出にくくなりますよね。
また、しみ抜きしにくい金糸や銀糸をコーティングしてくれて変色しにくくなります。

ガード加工のデメリット

ガード加工のデメリット
  • 繊維の中に汚れが入ってしまった場合、取れにくい事がある
  • 加工を掛けたところにしかクリーニングに出せなくなる
  • 加工の種類によっては、洗い張りや染め替えが高額になったり、そもそもできないこともある

一方デメリットもありますよ。

汚れが付きにくい加工ですが万能ではない。熱い水分やワインは浸透してしまうと言われています。
そして汚れが付いてしまった場合は逆に取りにくい!

理由は繊維の中に汚れが入ると、先にガード加工を取り除いてからしみ抜きしなければならないから。手間も時間も倍になり、金額も大きくなります。

次に、普通のクリーニングには出せなくなります。(安いクリーニングが良い悪いは別にして)
というのも、普通の丸洗い(ドライクリーニング)をするとガード加工が落ちて弱まる。
そのため加工してくれた業者に、そのガード加工に合った処置をしてもらう必要があります。

また加工の種類によっては、水や染料が染み込まず「洗い張り」や「染め替え」が出来なくなる可能性も。
将来的に染め替えしたい着物は、ガードをかける時に可能かどうか確認した方が良いのです。

ガード加工を掛けるかの判断基準

基本的にガード加工を掛けるかどうかは、本人の希望次第。
でもまだ着物に慣れていなくて心配なら、ここから解説する基準を参考にしてみて下さいね。

水シミが目立つ着物は掛ける

「水シミ」ってわかりますか?
「シミ」とは言っていますが、要は「水の跡」です。

例えばコピー用紙に水滴が垂れたら、色は無くてもシワシワと跡がつきますよね?
それが着物の表面で起こると「水シミ」。水のついた部分の生地が縮んで段差になっているのです。

コピー用紙に水を垂らして乾燥したもの。シワシワになって跡が付いている。

さらに「着物に付いている糊や染料」が水と一緒に流れてシミの外側に溜まると「輪ジミ」になります。

真ん中少し上に輪ジミが。

これを取るには一度着物を解いて全て水に通し、ピンと張って乾かし、再び仕立てる。
つまり「洗い張り」しなくてはキレイには取れません

そんな「水シミ」「輪ジミ」を防止するのに最適なのが、ガード加工。

そして、「水シミが目立つ着物」は「無地場が多い着物」。
柄が沢山ある着物は、多少の凹凸や輪ジミが目立ちません。

しかし、無地の部分は非常にアラが目立ちます。
色無地や飛び柄の小紋はもちろん、訪問着や付け下げも割と無地場が多くガード加工がおすすめです。

ビビネコは、ガードのかかっていない黒地の飛び柄小紋を茶道のお稽古に着ていました。
水仕事もお点前もして汚れてきたのでクリーニングへ。すると、呉服屋さんが「大きな水シミが結構ありますがどうしましょう?」と。
黒地だったので油断していました。洗い張りをするほどの着物ではなかったので、丸洗いだけして「水シミ」はそのままに。やはり無地場が多い着物はガードした方が良い!という教訓です。

縮みやすい着物は掛ける

一言に「着物」と言っても、様々な生地がありますよね。
その中でも特に水分に弱いのが「縮緬・お召・縮み・絞り」

細かい話なのですが、「縮緬・お召・縮み」の着物は「糸に撚り(より)がかかって」います。
糸をグルグルとねじりながら布を織り、それを濡らして縮ませた後いい感じに伸ばして最終的な反物にしている。

いい感じに伸ばしてあったところに水が付くと、ものすごく縮みます

「絞り」は、逆に「いい感じに残してあった絞りの山が伸びてしまう」。
大きな絞りで、最初からしっかり伸ばされたものは大丈夫ですが、細かい「総鹿の子」などは要注意。

そういった理由から、「縮緬・お召・縮み・絞り」はガード加工がオススメなのです。

「結城紬」は掛けない

本場結城紬。表面が毛羽立っているので水分が染み込みにくい。

基本「紬」は水が染みこみにくいのでビビネコはガード加工しません。
例外は「紬糸を使った縮み」。これは水で縮む可能性が高いので注意が必要!
新しく仕立てる方は事前に確認して下さいね。

そして特に今回お伝えしたいのが「結城紬」。
結城紬は、絶対にガード加工しないことをおすすめします!

その理由は「結城紬のツアー」に行ったとき、結城紬専門の整理屋さんに話を聞いたから。
「洗い張りしようとしても、ガード加工された結城は水が染みこまず反物が浮いてきてしまう。結城紬の風合いを決める、糊を落としたり掛けたりの作業が全くできない。本当に困る。」とおっしゃっていました。

パールトーン社では「自社での洗い張り」をされており、洗い張りも可能。
しかし「結城紬」だけは、「結城紬専門の整理屋さん」でしかきちんとした洗い張りが出来ません。
他の紬と使用している糊が違い、普通の紬と同じように洗い張りするとゴワゴワの硬い風合いに変わります

超高級な「本場結城紬」をはじめとする「結城紬」をお持ちの方は、ガード加工はやめましょう。
4代に渡って着続けるためには、適度な間隔での結城での洗い張りが必須です。

水洗いできる着物は掛けない

「麻」や「ポリエステル」の着物はそもそも水洗いできるため、ガードする必要がありません。
汚れたら水洗いしましょう。

茶道の着物のガード加工の要・不要

茶道のお点前って、どうしても茶碗の水気がひざに垂れますよね。
時には左袖が建水の水に浸かってしまう事も!
では茶道に着る着物は、全てガードが必要でしょうか?

ビビネコは全てにかける必要はないと思っています。その理由と使い分けを説明しますね。

お茶会や講習会用の着物はガード加工する

お茶会や講習会で、お点前をする、または水屋のお手伝いをする時。
水はねの危険性が高いのでガード加工がおすすめです。

このシチュエーションの場合良いものを着るでしょうから、ガードしておきましょう。外を歩いて移動する、野点を行う時も雨や泥から守ってくれます。

着つぶす予定のお稽古着物はガード加工不要

ビビネコも最初の頃はお下がりの古い着物、シミ汚れのあるリサイクル着物でお稽古をしていました。
そういった着物は、「たくさん着る」ことで十分その役目は果たしています

あえてガード加工はせず、擦り切れたり縫い目が裂けたりした時点で処分するのも一つの選択肢だとビビネコは思っています。

大切なお稽古着物はガード加工する

お稽古には着ているけど、思い出があったり大切にしたいものはガードを掛けるのが良いと思います。
その場合は、一度丸洗いやしみ抜き、洗い張りで汚れを落としてから加工しましょう。

ガードタグのあるリサイクル着物をクリーニングしたい時

リサイクル着物やお下がり着物にガードがかかっていたら、お手入れに悩みますよね?
この場合は、「パールトーン」と、「それ以外のガード加工」に分けて考えますよ。

パールトーンのタグが付いている場合

オンラインでアフターケアに申し込むのがオススメです。行きつけの呉服屋さんでパールトーンの取次をしているなら、そこで申し込んでも良い。

他のクリーニングに出さない理由は、「せっかくのガード加工が落ちてしまうから」。
もし、「加工が取れてしまっても良い」と思う着物なら、普通の丸洗いでOKです。

パールトーン社のアフターケアは2種類。
アフターケアが受けられないタグもあるので確認して下さいね)

「お手入れプレス3,300円~」
では汚れやすい衿・袖・裾をベンジンや水、溶剤を使ってきれいにしてくれます。また水を使った蒸気プレスで軽度な汗抜きを行い、アイロン仕上げされます。

「クリーニング+お手入れプレス6,600円~」
では、「お手入れプレス」の作業に加えて丸洗いがされます。もしこの時撥水効果が弱くなっていた場合、効力を戻してくれます。

「〇〇ガード」のタグが付いている場合

○○ガードも、ガードの効果を弱めずに普通の丸洗いをするのは困難です。
呉服屋さんで掛けたら、「〇年間は無料で何度でもアフター受けられます!」なんて言われますよね?

しかし、リサイクルで購入したものは無理。
汚れたら「撥水加工が弱まるのを受け入れた上で、普通のクリーニングに出す」もしくは「新しくパールトーンに出してアフターを受けられるようにする」のどちらかになります。

ガード加工のよくある疑問

洗い張りはできる?

パールトーン社では、自社で「洗い張り」を受けているため可能です。
他のガード加工に関しては、注文する時に確認することをおすすめします。
場合によっては一度ガードを落としてから洗う必要が出て、料金がかさむ可能性があります。

染め替えはできる?

パールトーンは可能です。ホームページでも染め替えの実例が紹介されています。
他のガード加工に関しては、注文時に確認した方が良いでしょう。

風合いは変わる?暑い?静電気は?

ガード加工をしても、ビビネコは風合いの違いは全く感じません
実際にやったことはありませんが、結城紬をガードしてその後結城以外で洗い張りすると風合いはゴワゴワになると思います。
暑さについては個人差があります。糸への加工で膜を作らないため空気や水蒸気は通しますが、糸が水分を吸収せず普通より暑さは感じるかもしれません。
糸に水分が含まれず、静電気は起きやすくバチバチする可能性が高いです。それによって、花粉やホコリも付きやすく、汚れやすくもなります。

パールトーンと○○ガードって何が違う?

どちらも着物や帯に撥水加工をするもので、効果的には同じです。
違いは、パールトーンはオンラインで全国どこからでもお手入れに申し込めるのに対し、○○ガードは加工した店舗でしかお手入れできないのが難点だとビビネコは考えます。

ガード加工された着物のお手入れ方法

「ガード加工で汚れが玉になるっていうけど、実際のお手入れってどうやるの?」って思いますよね?
お手入れ方法をまとめてみたので参考にどうぞ。

普段のお手入れ

ひどい汚れが付かなければ、普段のお手入れはとっても簡単です。

  • 水や汚れが付いて玉状になったら、着物の表面の水分、汚れをこすらずきれいな布で吸い取る。
    表面に汚れが残っていたら、少量の水を垂らし汚れを浮き上がらせて吸い取る。絶対にこすらない!
  • 汚れが無ければ、着用後にチリ・ホコリを払い、数時間~半日干してから畳んでしまう。

クリーニングへの出し方

もし上の対処でも取れない汚れが付いたら、専門家にお手入れに出す必要がありますよ。

  • 自分で取り切れない汚れが付いたら、できるだけ早く加工した業者にクリーニング、しみ抜きに出す。
  • 汗をたくさんかいた時、衿袖の着用汚れが気になってきたら加工した業者に丸洗いに出す。

しみ抜き、丸洗いは基本ガード加工を取り次いでくれた店舗に出します。
通常の丸洗いでは加工が取れて弱まる可能性があるため、ガードをかけた業者で効果を保つ洗いをしてもらいましょう。

まとめ

いかがでしたか?
今回は着物にガード加工をするかどうかの判断基準、茶道の着物での考え方を解説しました。

まとめると以下のようになります。

ガード加工がおすすめのモノ
  • 柔らかものの着物(特に無地場の多い着物)
  • 白っぽい帯
  • 縮緬やお召、縮みの着物など縮みやすい織のもの
  • 絞りの着物
ガード加工が不要なモノ
  • 紬糸を使った着物(結城紬・小地谷紬など)
  • 洗える着物
  • すでにシミや汚れがあって、汚れても気にしない普段着着物
茶道の着物の考え方
  • お茶会や講習会用の着物はガード加工する
  • お稽古着物でも、大切なものはガード加工する
  • 着つぶす予定のお稽古着物はガード加工しない

もっと簡単にまとめると、

水や汚れが付くシチュエーションで着る、大切な柔らかものの着物にだけ掛ける

と考えても良いと思います。こちらのほうが分かりやすいでしょうか?

長く着物を着ていると、だんだん着物の特徴がわかってきます。
すると、「あ、これはガードしておいた方がいいな」などと判断できるようになりますよ。

全部の着物にガードをかけるのは大変ですし、その必要もありません。
最初は上の基準を参考に判断してみて下さいね!

アフターサービス付き。安く、撥水効果を下げずお手入れできる
アフターサービス無しにすると、金額が抑えられる。

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